信じることと貫くこと

2020.10.25

FACE TO FAITH

日比谷野外大音楽堂

lynch.

 

lynch.にとって約8か月ぶりの有観客ライヴ。

この「FACE TO FAITH」というタイトルにこそ、lynch.を表すのに大切なものが全て詰まっていたんじゃないかと思う。

 

それは玲央さんの「無観客は僕の中ではライヴではなくて、こうやって目を見てお互い音を感じ合って演奏するのがライヴ」という発言もだし、なによりライヴに重きを置いているlynch.だからこそフロアと面と向かって対峙することの重要さを表すとともに、この姿勢こそが彼らの信念でもあるのだと。

 

未知のウィルスによって中止になったツアーや15周年企画たち。

収束が見えない中での待ちに待ったライヴ。

そんな再会の一発目に「OBVIOUS」を持ってきたのがニクい。

 

だって我々にとって<この夜だけがそう事実>だから。

 

lynch.にとって日比谷野音でライヴをするのは2回目で、前回は2017年。

もう3年も前なのかい。

チケットは完売したし、幕張メッセワンマンの告知があったりして、止まらないlynch.の勢いを思い知ると同時に、そこに明徳さんがいないという事実に呆然とするという複雑な心境だったので、正直あまりいい思い出とは呼べない場所でもあると個人的には思っていて。

 

それこそあの日は喪失を夜空に向かって歌った「KALEIDO」で4人しかいないという事実を突きつけられ、それを受けた「UNELMA」で涙雨が降ってきて、雨が止んで演奏された「SORROW」で悲しみを置いて歩いていく決意をしたように見えた一連の流れが強烈に残っている。むしろこれが前回の野音の記憶のすべてといっても過言ではない。

 

でも、今回のセットリストにも「SORROW」が含まれていて、あらためて同じ場所で5人で演奏することで、あのときこの場所に置いていった悲しみを払拭するというか、忘れ物を取りに来たようにあのときの悲しい思い出と決別できたんじゃないかと思うんです。

 

そういう意味ではあの時期に意図せず寄り添っていてくれていた「PLEDGE」や「EVIDENCE」といった楽曲たちも一緒にこの場所で聴けたのはとてもよかった。 

 

きっと“この夜”にはたくさんの意味があったのだと思う。

 

前回の野音の借りを返すための夜、

コロナ禍で会えなかった期間を取り戻すための夜、

 

そして、これからの未来を照らすための夜。

 

「LIGHTNING」で葉月さんが「今日この夜がみんなの希望になったら最高です。行こうぜ、未来へ!」と叫んだものそうだし、アンコールでの「今だけじゃなく、みなさんの人生において、lynch.の存在がこれからも光になっていけばいいなと思うし、その光で在り続けられるように僕らも頑張ります」というMCもそう。

 

lynch.というバンドはあんなにも黒くて、あんなにもうるさいのに、眩しいくらいに光を放つバンドだ。それはこのバンドが元々そういう性質だったわけではなく、後天的に手にした性質で、きっと明確な夢を口にして、それを時間がかかっても愚直に一歩ずつ自分の足で歩いてその夢を叶えてきたことで、バンドの生き様として我々の目には眩しく見えるというのが大きな理由だと思っているのだけど。

 

そのバンドがかれこれ10年近く目標に掲げている約束の場所。

 

「全員で行こうぜ、あの場所へ!!」と叫んでアンコールラストに用意された「THIRTEEN」も、<誓い交わしたあの場所へ>の歌詞のあとにもう一度「行こうぜ、あの場所へ!!」と叫んだのも、あとになってそういうことだったのか、と。

 

彼らが用意してくれた新しい光。

 

 

www.pscp.tv

 

2021年2月3日 lynch.初の日本武道館ワンマン決定

ガイドラインに沿ってのライヴだったためフロアは声を出せない状況で、葉月さんも言っていたようにいい意味でお客さんが静かなライヴで、この瞬間ばかりは声があがったし、鳴りやまない拍手がlynch.が武道館でやる意味を表していたと思う。

 

また、記念すべき初武道館には「THE FATAL HOUR HAS COME」と名付けられた。

この瞬間を待ちわびたすべての人にとって“宿命の時が来た”のだ。

 

もちろん今後の情勢によってはフルキャパでは出来ないかもしれない。

けど、キャパが制限されたとしてもlynch.が武道館でライヴをやることが我々のこれから続いていく人生、そしてこのコロナ禍においてひとつの大きな光として存在するのならやるべきと決行を決めたという背景にも愛を感じた。

 

しかもその直後に<愛している。ただ狂おしいほど>と歌うんだから。

その曲、奇しくも「THE FATAL HOUR HAS COME」っていうんですけど。

 

lynch.が初めて渋谷AXでワンマンをやったとき、「何年かかるかわからないけど、絶対に武道館でやります!」って言ってたときのことをふと思い出した。

 

震災の影響もあってお世辞にも満員とは言えなかったけど、このバンドは諦めが悪いし、しぶとくて憧れに貪欲だからいつか武道館でやるだろうなって思った。根拠はまったくなかったけど。

 

あれから10年、ついにあのダルマに目が入りますね。